賓客として長らく滞在を続けたサンドリア王城であったが、 さすがに梅雨真っ盛りのこの時期、湿気のこもりやすい城内はこまめに掃除を しておかないとカビも生えるというものか・・・道行くメイド達も忙しさのあまり、 国王の賓客として招かれている私への挨拶もそこそこに、自らの本分を全うしている。 実に感心なことだ。 この国の輝かしい未来が目に浮かぶようで、私も心軽やかな気分であった。 さて、いくら暇だからといって掃除の邪魔こそすれ手伝うなどもってのほか、 城内でも散策しようと、風の吹くまま気ままにぶらぶらしていた時のことだった。 ふと通りかかった部屋の手前で、 私はいささか高圧的と形容せざるを得ない調子の声で呼び止められたのだ。 女の声「おい、貴様!暇なら少し私の話を聞くがよいぞ!!」 |
・・・我が耳を疑うとはまさにこのことである。 国王の賓客として招かれたこの私に対する、あまりに横柄な態度・・・ しかし、声の正体に気付いた時に私は、なるほど・・・と納得せざるを得なかった。 そう、声の主は今や飛ぶ鳥も落とす勢いの女将軍クリルラ・V・メクリュ様だったのだ。 私がこの無礼にいささか表情を険しくしていることに、気付いてか気付かずか ・・・将軍は言葉を続けた。 女将軍「私は温泉の水を所望する!貴様・・・今すぐに取ってまいれ!!」 |
・・・この女、たとえ女だてらちょっとばかり剣の腕が立つからといって、 少しばかり図に乗ってはいまいか?高圧的な態度に出れば力なき者が全て言いなりになるとでも思っているのであろうか? 片腹痛いとはまさにこのことである。 ・・・身の程を知らしめてやる必要があるようだ 私は、少し背筋を伸ばし、女将軍を見据えて言い放った。 |
ははぁ!仰せのままに!! ・・・あぁ、こんな自分が憎い(しくしく) |
てなわけで、やって来たるは今巷で噂の、 げるすぱスパーガーデン! 約120種類もの豊富な温泉と楽しいアトラクションで一躍有名となった観光地である。 今や地元のサンドリアンのみならず遠くはウィンダスから訪れる人も少なくないと云ふ・・・ ちなみに名物は"もみじ天ぷら" 紅葉した葉を油でサッと揚げ、子供から大人まで楽しめる・・・(以下略) とまぁ、それはともかくとして・・・だ。 問題は・・・この星の数ほどある温泉の中から、 クリルラ様がお気に召す泉質の湯を見つけ出さねばならぬということか・・・。 まさに、神が我に与えたもうた試練・・・ 見ていて下さい、きっと見つけ出してみせます! |
アリアン「・・・とか言って、一回行ったことあっからどこにあるか知ってんよね〜♪」 そう、目指すはゲルスバ最奥!究極の美肌水が湧き出る、あの伝説の混浴露天風呂! |
変質者「ぐへへ!坊や〜!おぢちゃんと一緒にお風呂入らないか〜い♪(涎)」 アリアン「・・・・・・。」 |
そう・・・そう言えば、確か前回ここらへんで絹を引き裂く悲鳴があったような・・・ 性格はどうあれ見目麗しい銀髪ミスラちゃん・・・今回もどっかに居ないかなぁ〜♪ と、更なる運命の出会いに胸を高鳴らせるも現れず・・・ 人生、そう上手くは行かないらしい(とほほ) |
そして到着!露天風呂! 念のため、立て看板に書かれた温泉の説明を読んでみる。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 泉質:ナトリウムカルシウムオハダスベスベツルツール塩化物炭酸水素塩泉 効能:高血圧症、リューマチ、神経痛、通風、慢性便秘症、糖尿病、超美肌効果など □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ アリアン「ふっふっふ、コレやコレや!間違いあらへん!」 |
せっかくこんな奥地までやって来たのだ、温泉水だけ汲んで帰るのも味気ない。 隣りに美女が居ないのも寂しいが、ま、たまにゃ独りもいいもんか♪ と、ゆっくり温泉に浸かっていくことに。 |
アリアン「ふは〜〜♪ええ湯やぁ〜♪生き返る〜〜〜♪」 こうしてゆっくりと温泉に身をたゆたわせていると全てがどうでもよくなってくる。 戦いの中に身を置く毎日、戦争による世界の荒廃や、飢餓に苦しむ人々・・・ そういった日々頭を悩ませている出来事がほんの些末なことに思えてくるのだ。 そう、自分の体が子供になってしまったことだって・・・ ほんの・・・ 些細な・・・・・・(うとうと) |
アリアン「・・・っと、ハっ?!」 いかんいかん・・・あまりの気持ち良さについうとうとと眠ってしまったようだ。 見れば、辺りも少し薄暗くなっている。クリルラ様もお待ちしていることだし、 そろそろ・・・ 帰ら・・・ なくて・・・ |
アリアン「・・・?!」 |
アリアン「・・・・・・っっっっ?!!!!」 |
アリアン「・・・も、ももも、もしかして・・・も、もも、元に・・・」 すらりと伸びた美脚、世の女性達を虜にして止まないこの丹精な甘いマスク・・・ ヴァナ・ディールベストジーニスト賞やピューリッツァ賞に幾度となく輝いた・・・あ、あの・・・ あの頃の大人の姿に・・・ アリアン「戻れた!!?」 |
いったい何が起こったのか、さっぱり理解できないが・・・ とにもかくにも子供の姿になって幾年月、もう戻れない・・・一生子供の姿のまま、「いやぁ♪超カワイイ♪」 「あぁん!弟にしたい〜♪」と道行く美女達にちやほやされたまま一生を終えるのかと、半ば諦め気味に覚悟を抱いた日々。 しかし、そんな日々とも、もうこれでお別れだ!そう、ついに・・・ついに念願の大人の姿に戻ることが出来たのだ!! そう、戻ったのだ!元の姿に!! アリアン「戻ったぞーーーっ!!!」 |
アリアン「やった!ついにやった!やったでワイは!!」 |
アリアン「大人の姿に戻れたんやぁーーーーっ!!!」 |
アリアン「今・・・今行くで!待ってろミーゴ!愛しい人よ!!」 |
アリアン「私の妻という名前が、あなたを待っている〜!!」 と、何をとち狂ったのかミーゴおね〜さまへのプロポーズを決意し、 ゲルスバの地をダッシュで駆け抜けるアリアンであったが・・・ はしゃぎ過ぎて足元への注意が疎かになっているアリアンが 先日からの豪雨で、腐って脆くなってしまった丸太橋を 踏み抜くのは・・・ ・・・必然だった。 |
・・・バキィッ! アリアン「・・・・・・え?!」 |
どっぽぉ〜〜〜〜ん!! アリアン「ぶわっ!?つ、冷てっ!!」 アリアン「・・・・・・って」 |
アリアン「・・・アレ?!(きょとん)」 大人の姿に戻れたのも束の間・・・ 冷たい水の中に落ちてしまったかと思ったら、子供の姿に戻ってしまっていたアリアン いったいさっきまでの出来事は何だったのか・・・ 魚さん「夢でも見てたんじゃないかい?」 子供の姿になってしまった謎は、深まるばかりであった。 つづく |
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